「こどもの「やりたい」を引き出すコーチング」
「こどもの「やりたい」を引き出すコーチング」
最初にまとめ
何ヶ月かに1回は読むことが自分の中で義務化されている教育系とコーチング系の本。
コーチングのプロが、自身の子育ての経験を通しつつ、子どもへの接し方のヒントをくれる本。自分自身の経験とも相まって勉強になったし楽しかったです。
コーチングとは
3つの原則
- 双方向である
- 個別的に、相手に合わせた関わりをする
- 継続して関わる
代表的なスキル
- 聞く
- 質問する
- 承認する
- リクエストする
PART1 子供をうけとめる
1 - 聞く
相手が「聞かれた」と思う聞き方
- 最初から最後まで聞く
- 相手の言わんとしていることをそのとおりに理解しようとする
- 自分のやっていることをやめ、自分の予測や価値判断を横において、聞く
- 忠告も、否定も、解決も、いらない
2 - 見る
エンジェルアイ・相手を無条件に受け入れる眼差し
3 - ペーシング
相手にペースをあわせること。 相手の言うことや気持ちを受け止める。自分の忍耐力と思いやりを総動員してしっかり受け止める。
- 相手の言葉を繰り返し、気持ちを受け止める
- 相手の大切にしている世界や価値観を尊重する
このペーシングという単語は、そのままの意味なんだけど、とても耳に残りやすいなと。 結局、PART1は(もしくはこの本全体についても)この言葉がすべてなんじゃないかと思う。
PART2 子どもに働きかけるスキル
1 - 質問する
コーチは質問のプロ。
オープンクエスチョンのほうが相手に働きかけることができる
「宿題やった?」
「宿題どう?」
の違い。5W1Hで聞かれれば、「言われなくてもやるよ!」という返事にならない。
でも、「なぜ」は使い方に注意。問い詰めることにならないように
一般的に質問には2種類ある。それをしっかり認識しながら使い分ける
- 相手に自由に考えてもらうための質問(=相手を動かすための質問?)
- 自分が知りたい情報を集めるための質問
2+3 - アクノレッジする
Acknowledgeとは、その人がそこにいることに自分は気づいている、ということを相手に伝えてあげること。
相手を承認することは3種類のスキルがある
- 結果承認
- テストやスポーツの結果を褒める
- 行為承認
- 努力やプロセスを褒める
- 存在承認
- 笑顔を向けること、話を聞くこと、子供の存在を喜ぶこと
例)
- 子どもの好きなものを一緒に食べ、子供の世界を一緒に味わうのも承認
- 子どもなりの「ボケ」をちゃんと拾って「ツッコミ」をいれてあげるのも承認
世の中には2種類の人がいて、他人に承認されたい人と、他の人を承認しようと思って生きている人。前者がとても多いけど、後者になれる人はとても素敵だし、そういう社会は良い社会ですね。
4 - リクエストする
「不満は聞かないけど、リクエストなら答えられるよ」
PART3 視点を増やすスキル
1 - コミュニケーションのタイプを知る
冒頭の「コーチングとは、個別的に関わることである」についてだが、十人十色どころか無限にある相手の性格に対してどのように関わるか。ここでは大きく4つのタイプに分けて考える
- コントローラー
- 自己主張多め、感情表現少なめ
- 独断的、目標達成意識が高い、人間関係よりも課題をこなす、結論を急ぐ、他人を責める
- プロモーター
- 自己主張多め、感情表現多め
- アイデア豊富、細かいことは気にしない、熱しやすく冷めやすい、楽しいことが大好き、褒められて伸びる、よく話す
- サポーター
- 自己主張少なめ、感情表現多め
- 人を助けるのが好き。穏やか。何かを決めるのに時間がかかる。目標達成意識が低め、気配り、争いを避ける
- アナライザー
- 自己主張少なめ、感情表現少なめ
- 計画を建てるのが好き、冷静な印象、失敗や間違いが嫌い、慎重に人と関わる。大人数は苦手、傍観者になりがち
上記は、タイプ分けしてレッテルを貼るのが目的ではなく、他人の傾向を理解して、相手に合わせて行動するためのものである。
以前受けた某コミュニケーション研修では、それぞれドライバー、エクスクレッシブ、エミアブル、アナライザーという名前だったが、内容は全く同じと見て良さそう。その時には4象限だけでなく、更にそれぞれ2分割して、8個に分けて話されていた。ドラ+ドラ、ドラ+エク、エク+エミ、、、などと。
レッテルを貼るとなんとなく気持ちよくなってしまうんだけど、そんなことは意味がないどころか、勘違いして失敗しまう場合があるので要注意ですね。
2 - 優位感覚を知る
他方、人がどの感覚を通して物事を認識しているかについても4つの傾向があるとのこと
- 聴覚系
- 本を読むより話を聞く
- 人の言葉や声の調子に反応しやすい
- 騒音を嫌い、静かな環境が好き
- 言語感覚系
- 思考することがすき
- 意味が通るかを重視
- アウトプットする機会が動機になりやすい
- 触覚系
- ものを作るのが好き
- 説明書の前にいじってみる
- 視覚系
- メモが好きで、図やイラストも使う
- 口頭の指示よりも書面を好む
- 人の表情や身振りに注目
子どもにはどの方法を使ってアプローチするのが良いか、タイプを見極めるのがよいと。
では自分の子供はどうだろうかと考えてみると、とても難しい。全部当てはまるような気がする。完全素人な推測だけど、子どもって自分の感覚をそれぞれ試している段階なので、どれかに分けられるものでもなさそうな気もする。もちろん人による。
3 - 意識して視点を動かす
- ディソシエイト
- 客観的に見る
- アソシエイト
- 主観的に見る
鳥の目、蟻の目ってやつかね。
4 - 宝物を見つける
「今の子ども」を味わう
という章にかかれている内容は本当に、子どもが大きくなるに連れ、年々身にしみてきます。
子どもはあっという間に大きくなってしまうから。。。日々、いろんなことができるようになったら嬉しいし、色んな話ができるようになるのも、一緒に高度な遊びができるのもとても楽しいんだけど、3歳くらいのかわいさはもう戻ってこないのかなどと感傷的になることもあります。
言い間違いなんて本当にかわいくて、自分はevernoteにずっと記録しているんだけど、今でもたまに読み返して笑っています。
また数年後には、あの頃もかわいかったなと今頃のことを思い出すので、まさに今のこども味わうことを忘れずにいたい。
PART4 自分の内側に力強さが生まれるスキル
1 - 「軸」を持って関わる
子育てをする上で何を「軸」とするのか。
この章でも軸という言葉をあえて言語化している。
日々、自分はどういう目的を持ってその人と関わるのか
- 子どもを常に○○するのが自分の役割だ。
- 子どもに○○な人と思われたい。○○な人とは思われたくない。
- 自分が憧れる父親像は○○で。それはいつも彼が○○しているからである。
- 私の親としての軸は○○である。
ここは、上記のペーシングと並んで、本書のもっとも本質的な問いかけのように思う。
2 - 二分化について理解し、二分化から自由になる
二分化、あるいは二極化とはどういうことか。
このタイトルを読んで真っ先に仏教の「中道」を思い出しました。ある意味、自分が最も大事にしている言葉でもある。
仏教の実践についての基本的な考えで、対立または矛盾しあう両極端の立場を離れ、両極端のどれにも偏らない中正な立場を貫くこと。
3 - 思い切って、一体感を味わう
この章はもう本書のテーマと関係ないかも、と思ったけど、自分も子育てを通して、見ず知らずの人にとても感謝した経験について、どこかに書き残したいと思ったのでここに。
- 電車で子どもを膝の上に乗せて座席に座っていたときに子どもがグズり始めたんだけど、目の前に偶然若い女の子、多分18か19くらい、がいて、僕と子どもに背中を向けている状態で立っていた。ゲーセンで取ったのか、ぬいぐるみを手に持って背中側で持っていたのだけど、子どもがそれに反応した事に気づいて、数秒おきに何度も何度も、後ろを向いてそのぬいぐるみをプイっと向けてくれて子どもをあやしてくれた。どうもありがとう。助かったし、子どももとても嬉しそうだった。あなたにたくさんの幸せが訪れますように、と心から思いました。その場でお礼をしたらもう止めてしまうのでは、と要らぬ心配をした僕は、敢えてそっぽを向いて気づかないふりをしました。多分あなたなら、それでも続けてくれていたでしょうけど。
- これまた電車内でぐずって大きな泣き声を上げたときなんだけど、スマホでゲーム?をしていた太っちょの若い男が何やら叫んで、多分子どもや僕たち両親に文句を言いながら隣の車両に言く、ということがありました。その直後、すぐ近くの席に座っていた初老の女性が、おそらく気遣ってくれて、でも何事もなかったかのように子どもあやしてくれて、僕たちの味方であることを示してくれました。とても救われました。どうもありがとうございました。
- 吉祥寺のちょっと人気のあるレストランで、まだ小さかった子どもを抱えて入ろうとしたら、店内に案内された時に思ったより店内が狭く感じて、「あ、ちょっと他の人に迷惑かけちゃいそうなのでまたにします、、、」と言ったら、シェフ?らしき初老の男性が「いいんだよ、うちはそんな気遣うような店じゃないんだから、ほら、どこでも好きな席選んでいいから!」といって、テラスの一番良い席を選ばせてくれました。なんというかっこいい男性だろうと思いました。どうもありがとうございました。
4 - 事実を伝える、そして味方でいる
事実を言って子どもを正そうとするとき、つい責めるような言い方になってしまい、子どもから見ると、立ちはだかる「壁」のように見えてしまうようなことは避けなければならない。
- 目に見える事実
- それを見た自分の中に起こった事実
を分けて、客観的に伝える。それを、子どもが聞きやすいように、子ども目線で(時におもしろおかしく)伝え、子ども自身で確認できるように伝えないといけない。
自分にとって本書の3番目に刺さったところである。僕も子どもに対して壁化してしまう。
5 - すべての感情を味わうと決める
そうですね。子育てって結局そういうことなんだと思います。そして、それはすごく難しくて苦しくて、忍耐が必要なのですよね。
PART5 子どもから学ぶ
子どもは、今ここで何を選ぶのか、何に価値を置くのかを、親に問うて来る
本当に、そうです。自分の論理によって合理的に考えれば一択なんだけど、その論理自体が子育てとして正しいのかと言われると揺らいでしまうような困難な問いかけばかり。
もともとコーチとクライアントというのはお互いがお互いの学びを促進していく関係
なるほど、そうなんですね。子どもからは学ぶことばかりです。
以上、いろいろ思い出させてくれるよい本でした。